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全身の病気と目
アトピー性皮膚炎
最近の傾向
予防と対策
アトピー性皮膚炎 監修:田野 保雄 先生(大阪大学医学部教授)

 アトピー性皮膚炎の患者さんがたいへん多くなっていますが、近年、重症のアトピー性皮膚炎の患者さんのなかには、目の病気を合併する例が多いことが指摘されています。アト ピー性皮膚炎のある人は、自分の目の様子に関心をもち、眼科での検査を受けることが大 切です。
   
かすみ目男性
 最近の調査で、重症の「アトピー性皮膚炎」の患者さんに、目の病気を合併する人が多いことがわかりました。なぜアトピー性皮膚炎があると目の病気になるのか、原因はまだよくわかっていません。ただ、その数は増える傾向にあり、今、注意が促されています。
 かつて、アトピー性皮膚炎といえば小児の病気と思われていましたが、最近では大人になっても改善しなかったり、成人になってから発症するケースが増えています(成人型といいます)。しかも、この成人型のアトピー性皮膚炎には、重症例が少なくありません。
 こうした背景が、アトピー性皮膚炎による目の病気の増加につながっていると思われます。
 アトピー性皮膚炎の患者さんがかかりやすい目の病気は、主に次のようなものです。

●白内障
「白内障」は、カメラでいえばレンズの役割をする「水晶体」が濁る病気です。水晶体が濁ると、光が通りにくくなるため、濁りの進行とともに視力が低下していきます。
 白内障は高齢者に多い病気ですが、まれに10〜30歳代の若い人にも起こることがあります(若年性白内障)。白内障全体からすると、「若年性白内障」の占める割合はごくわずかですが、そのわずかななかに、成人型アトピー性皮膚炎の患者さんが多いのです。成人型アトピー性皮膚炎の患者さんの約10%に白内障が起こっているという報告もあります。
 アトピー性皮膚炎と白内障の関連性は、まだよくわかっていません。一説では、皮膚と水晶体の細胞は同じ種類に属しているため、皮膚と同じ反応が水晶体にも起こるのではないかといわれています。また、目の周囲に皮膚炎があると、そのかゆみで目をたたいたり、こすったりするために、白内障が起こるのではないかという説もあります。
アトピー性の白内障の治療法は、一般の白内障と変わりません(参照ページへ)。ただ、皮膚炎が顔面にあると、手術後に目をこすってしまい、挿入した眼内レンズの位置が動いてしまうことがあります。したがって患者さんの病状によっては眼内レンズを入れず、眼鏡やコンタクト レンズで屈折を矯正することもあります。

白内障による水晶体の濁り
◆加齢性白内障
水晶体の周辺部から濁る場合と核から濁るタイプがあり、徐々に進む。
◆アトピー性白内障
水晶体の前部が濁るケースが多い。急速に病状が進むこともある。

●網膜剥離
「網膜剥離」は、網膜が眼球壁からはがれて、視野や視力に異常を来す病気です。
 ここ数年、10〜30歳代のアトピー性皮膚炎の患者さんに、この網膜剥離を合併する人が増えており、問題になっています。
 両者の関連性については、いろいろな説があります。海外では、アトピー性皮膚炎で網膜剥離を合併する例はほとんどないことから、人種的な問題や、日本人特有の生活習慣がかかわっているという説もあります。また、顔面に皮膚炎があると、かゆいために、目をたたいたりこすったりします。その衝撃によって、網膜がはがれるのだともいわれています。
 網膜剥離は放置すると、場合によっては失明にいたることもあるので、迅速な治療が大切です(参照ページへ)。アトピー性の網膜剥離の場合、治療の効果は高いのですが、再発率が普通の人より高いので、継続して注意する必要がります。

●結膜炎・春季カタル
 アレルギー性結膜炎としては、白目の部分(結膜)が炎症を起こして、かゆみを伴う「結膜炎」や、その重症例である「春季カタル」なども、アトピー性皮膚炎の患者さんに多く見られるものです。
 結膜炎では一時的にステロイドの点眼薬を用いたり、春季カタルの場合は、最近、免疫抑制薬のサイクロスポリンの点眼薬が用いられるようになり、効果をあげています。

●円錐角膜
 「円錐角膜」は、角膜の中心が円錐状に飛び出してくる病気です。ひどくなると、角膜が白濁して視力が低下しますが、頻度は高くありません。治療としては、角膜の形状を補正するコンタクトレンズを装用しますが、重症になると角膜移植を行うこともあります。